流出

2010年10月9日 読書
ラノベ好きの友人との茶飲み話。
「小野さんの悪霊シリーズがリライトしてMFで出るんだってさ」
ほー。
「でもさ、それってK社からはもう本を出さないってことかしら」

元々「悪霊シリーズ」はK社で出されていたし
ヒット作の12国もK社から色んな版で出されていたが
こちらは新刊がずっと出ていないし
悪霊だって人気がないわけでもないのに
再販を別会社から出すということは
手を切ろうとしているのではないかという推測だ。

K社の名物編集者が亡くなってからというもの
作家の離れっぷりがすさまじい。
最近出版された90年代新本格派の特集本は角川、原、光文社・・・
あのブームを作ったK社から出てこないのもそのひとつなのかもしれない。

新本格派は海外にも影響を与えていたが
それをがっつり受けていた台湾より出てきた作品
Lan Xiao著/玉田誠訳「錯誤配置」(原題:錯置體)

高雄を舞台にした医学ミステリ。
幻想的な謎掛けから始めて現代らしい不気味な脅迫で
主人公と読者を恐怖に落とし入れ
最後の叩き込みまでのストーリー展開が素晴らしい。

キャラ萌え作品というわけではないものの
道化役の李君、内気すぎる探偵の秦君、精神的に弱い主人公の藍君
この3人のセリフ廻しは京極堂シリーズを彷彿とさせる。

死体の描写については医学ミステリだからかもしれないが
日本よりも生々しい感じがあり、読後感がいいとはいえない。
しかし、その読後感の悪さが逆に印象深く、忘れがたい作品になるだろう。

で。
読み終わった後に作中でミステリおたくの主人公が上げた
日本のミステリを読み返したくなる(笑)
戦前から戦中ぐらいに流行った怪奇趣味が好きだし
その怪奇趣味を復古させたのが新本格派の一部なのよね。

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