まんまこと

2007年6月5日 読書
先日「サイン本」ということで、衝動買いしたもの。前に勤めていた会社の同僚が著者を大好きで、私が代理で買ってくるたびに彼女の読後に貸してもらった。ストーリーテーリングもさることながら、文章が温かくてよい。

16歳までマジメな少年だった主人公。彼の家は長屋の揉め事をまとめる名主で、玄関先に当事者を呼び判決を下す。ところが、どこをどう間違ったのかお気楽トンボへの道を歩み始めたために、悪評がたつのは遅くはなかった。悪友仲間の別の長屋で名主の家の子、同心見習いの子とつるんでは、揉め事を引き寄せ、解決していくという話。

読みきり単行本で、主人公の少年期〜青年期にかけてを取り扱い、大人になる瞬間を捉えている。そんなもう甘酸っぱいちゅうか、座りが悪くなりそうな話にも関わらず、主人公の感情をじんわり感じてしまうのは、ひとえに作者の語り口調のよさと説教染みたところのなさにある。

似たような話に「しゃばけ」シリーズがあるのだが、こちらは妖怪がいっぱいてんこ盛りで、こちらの主人公に比べるとまだまだモラトリアムに浸っている。身体が弱くて両親も乳母代わりの兄やたちも砂糖菓子よりも甘くくるんで若旦那(主人公)を甘やかすのだ。日の中で布団にくるまっているような温い小説なので、これもオススメ。

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