「夜宴」に見る中国文学愛♪
2006年11月24日 映画 コメント (4)「大きな画面で見た方がよいよー」と言われたため、中国大作映画「夜宴」(日本語版はまだない)を見る。
舞台は唐が滅亡した五代時代のある国。兄王を殺して帝位を簒奪した弟は、兄王の妻を娶り、兄王の息子を殺そうとする。
こうすると、母親と息子の父親を殺された復讐劇だと思うだろうが、実際は兄王の妻(皇后)と兄王の息子(公子)の間には血縁関係はないようで、複雑な三角関係で物語は展開する。
皇后は王に嫁いできたときに、公子に一目惚れしていたものの、義理の母子になるため、親子の礼にしばられていたが、王が暗殺されたことで、公子に猛アタック。しかし、公子はあくまで母親への礼儀を崩さず、重臣の娘で皇后の侍女である青女に好意を寄せる。青女が「私、公子に愛されてるの。ふふん」とアピールするたびに皇后は嫉妬していじめる。さらに王を弑した弟は皇后に横恋慕していて、兄を殺した途端に妻にする。青女の兄も兄妹愛以上に青女に愛情を抱いているようだし、ぐちゃぐちゃ。
内容に感激とか斬新さを狙うとスカを食らうので、そこは置いておいて。今のエピソードに春秋戦国時代を思い起こすもよし、俳優のチャン・ツイイーやダニエル・ウーに「はうああ!」と吼えるもよし。映像美もさることながら、歴史好きにはたまらないツボ部分を紹介。
まず1点が「越人歌」。これは元々ある古典詩より引用され、物語の中心に流れている。中国語字幕で「兮」が多用されているので、《楚辞》か?と思ったら、意外に時代が下っていて《玉台新詠》にあった。さらにいえば、この詩について図書館で調べるかと思ったら、手頃なところで皇なつきの単行本《山に住む神》に収録されている「越人歌」という作品で、詩にまつわるエピソードを絵に起こしていた。以下に詩の翻訳を引用する。
楚の王子と一緒に舟に乗った越人がそれを喜んで歌ったとされている。楚の王子は歌に感激して錦の着物を送ったとされる。
越人といえば南。今の中国で言えば浙江省。この映画の注目点に衣装の華麗さであるが、都にいる王侯貴族らは袖の広いズルズルっとした絹の服をまとっている。政治の世界を疎んで歌舞音曲にうつつを抜かしている公子は、麻で出来た作務衣のような服で短いズボンで、裸足に仮面を被っている。これが昔の越人の服飾。仮面劇も南の国が発祥とされ、今でも昆劇に残っている。最後の舞踊シーンは「越人歌」のエピソードを踏まえて見ると、さらに楽しめる。
もう1点は私だけかもしれないが、「九族滅殺」。
中国らしい刑罰ですね。御家断絶どころじゃないわけで。
そらあ兵士らも自分の死で贖えば、それだけは勘弁しちゃると言われたら、自死しますわな。
他にも役職名や引用される古典に、中国文学好きなら身悶えそうな小物がいっぱい。
血の流れるさまがカメラのスピードを変えたり、微妙に血の色を変えたり、こだわっている。他にも衣装の赤、建物の赤、化粧の赤。全てが一色ではなく、微妙に違う赤が使われていて、毒々しいだけではない、何か神秘的な色合いを帯びて見えてくるのがステキなのだ。
「無極(邦題:プロミス)」よりは架空歴史映画として見られるのでオススメ。現地では評判が今ひとつらしい。肌の露出が多いから?
舞台は唐が滅亡した五代時代のある国。兄王を殺して帝位を簒奪した弟は、兄王の妻を娶り、兄王の息子を殺そうとする。
こうすると、母親と息子の父親を殺された復讐劇だと思うだろうが、実際は兄王の妻(皇后)と兄王の息子(公子)の間には血縁関係はないようで、複雑な三角関係で物語は展開する。
皇后は王に嫁いできたときに、公子に一目惚れしていたものの、義理の母子になるため、親子の礼にしばられていたが、王が暗殺されたことで、公子に猛アタック。しかし、公子はあくまで母親への礼儀を崩さず、重臣の娘で皇后の侍女である青女に好意を寄せる。青女が「私、公子に愛されてるの。ふふん」とアピールするたびに皇后は嫉妬していじめる。さらに王を弑した弟は皇后に横恋慕していて、兄を殺した途端に妻にする。青女の兄も兄妹愛以上に青女に愛情を抱いているようだし、ぐちゃぐちゃ。
内容に感激とか斬新さを狙うとスカを食らうので、そこは置いておいて。今のエピソードに春秋戦国時代を思い起こすもよし、俳優のチャン・ツイイーやダニエル・ウーに「はうああ!」と吼えるもよし。映像美もさることながら、歴史好きにはたまらないツボ部分を紹介。
まず1点が「越人歌」。これは元々ある古典詩より引用され、物語の中心に流れている。中国語字幕で「兮」が多用されているので、《楚辞》か?と思ったら、意外に時代が下っていて《玉台新詠》にあった。さらにいえば、この詩について図書館で調べるかと思ったら、手頃なところで皇なつきの単行本《山に住む神》に収録されている「越人歌」という作品で、詩にまつわるエピソードを絵に起こしていた。以下に詩の翻訳を引用する。
今宵はなんという宵
川の中州であしを刈る
今日はなんとよい日
王子と舟でご一緒
好かれたいけど恥ずかしい
お会いできたうれしさ
貴方が山なら 私は木
貴方が木なら 私は枝
ときめく心
あなたはご存じない
楚の王子と一緒に舟に乗った越人がそれを喜んで歌ったとされている。楚の王子は歌に感激して錦の着物を送ったとされる。
越人といえば南。今の中国で言えば浙江省。この映画の注目点に衣装の華麗さであるが、都にいる王侯貴族らは袖の広いズルズルっとした絹の服をまとっている。政治の世界を疎んで歌舞音曲にうつつを抜かしている公子は、麻で出来た作務衣のような服で短いズボンで、裸足に仮面を被っている。これが昔の越人の服飾。仮面劇も南の国が発祥とされ、今でも昆劇に残っている。最後の舞踊シーンは「越人歌」のエピソードを踏まえて見ると、さらに楽しめる。
もう1点は私だけかもしれないが、「九族滅殺」。
中国らしい刑罰ですね。御家断絶どころじゃないわけで。
そらあ兵士らも自分の死で贖えば、それだけは勘弁しちゃると言われたら、自死しますわな。
他にも役職名や引用される古典に、中国文学好きなら身悶えそうな小物がいっぱい。
血の流れるさまがカメラのスピードを変えたり、微妙に血の色を変えたり、こだわっている。他にも衣装の赤、建物の赤、化粧の赤。全てが一色ではなく、微妙に違う赤が使われていて、毒々しいだけではない、何か神秘的な色合いを帯びて見えてくるのがステキなのだ。
「無極(邦題:プロミス)」よりは架空歴史映画として見られるのでオススメ。現地では評判が今ひとつらしい。肌の露出が多いから?
コメント
ただ漠然と「詩的なセリフで美しいわ」と感じるのが精一杯の俺とは違って、色んな引き出しから引っ張り出せるとこに惚れ惚れ(*^^*)ありがとー。
>現地では評判が今ひとつらしい。肌の露出が多いから?
それと蘊蓄好きの大陸映画ファンには中身が空っぽすぎるから?(笑)
どっかで聞いたことある詩のタイトルだと思ったら、自分が持っているマンガだったことのショックよ!(がっくり)
大学時代の「中国文学思想史概略」とかいう、とっ散らかった参考書をひっくり返したり、漢和辞典や歴史年表を見たり、久しぶりに勉強しました〜。
いい映画の出会いをありがとうございます!
僕は日本語を勉強する中国人です
はじめまして、どうぞよろしくお願いします
香港や中国の映画や小説について
ぽつぽつ感想書いているので
よろしくお願いいたします。